しまんちゅの日記

~映像翻訳と映画と沖縄~

聞こえてくる

窓を開けるとクラリネットの音が聞こえてくる。

 

去年から週末の午前中、

どこかの誰かがクラリネットで「Over the rainbow」を吹いているのが聞こえてきた。

勝手に近くの中学校の吹奏楽部の女の子の音だと妄想している。

 

気がついた頃、彼女の演奏はとても下手だった。

音が出ていなかったり、外したり、と。だから練習しているのだろうけど。

毎週、ベランダに洗濯物を干しながら彼女の演奏を聴いていた。

頭の中ではドロシーではなく、

オードリー・ヘップバーンが音に合わせて口ずさんでいた。

妄想の彼女はだんだん上手くなっていった。

そして、いつしか私の勉強する時のBGMになっていった。

 

お正月の三が日。

彼女のクラリネットは休むことなく聞こえてきた。

ただし、「Over the rainbow」ではなく、音階の練習を何時間もしていた。

なんだか、お前もがんばれよ、と言われている気がして

「そうね、基本に戻るって大事よね。」と私も自分の勉強の基礎に戻ったりした。

彼女の演奏が聞こえてくると、勉強しなくては、という気にさせられて

いつもデスクに向かうようになっていった。

 

今日、彼女の演奏する曲が変わった。

「Close to you」

たどたどしい演奏に戻っていたけど、きっとモノにするんだろうなぁ。

彼女ならできる、と思えるのは、ずっと音を聞いてきたから。

 

だれかの努力を、だれかは見ているもの。

そして、その姿(音)は他のだれかを引っ張るものになるのだと思う。