しまんちゅの日記

~映像翻訳と映画と沖縄~

変えることのできるものについて、 それを変えるだけの勇気を

 

『女を修理する男』

コンゴ民主共和国で性的被害にあった女性達を治療するデニ・ムクウェゲ医師は、2012年に脅迫を受け一時は海外へ。しかし翌年には命の危険を冒して再びコンゴに戻る。そして命がけの治療を再開する───

 

「この子はこれからセックスもできない」

「この子は女にはなれないだろう」

 

手術室で発せられるムクウェゲ医師は怒りに満ちている。

膣と尿道が一つの穴になるような暴力。

1歳にも満たない赤ちゃんが性的暴行をされる。

そして、その暴行犯が野放しにされている世界。

被害者が話す世界は、秩序に守られている(法的に)日本から見たら狂っている。

 

性的暴行の目的は、理性が狂った性欲求だけが原因ではない。

コンゴスマホに使われるレアメタルなどの豊かな天然資源を持つ国であるが、

他国の企業や軍隊に搾取され国民に還元されていない貧しい国でもある。

そして性暴力が地域を支配するための武器として横行している。

これは地域だけの問題ではないと、ムクウェゲ医師は世界に訴える。

 

ムクウェゲ医師は傷つけられた身体を治療するだけでなく、

女たちを再び立ち上がらせる支援もしている。

「名誉と勉強の機会と純潔を失った。」という女の子たちに

「君たちは何も失っていない。」と伝え続ける。

 彼の言葉を聞いていると、この映画の邦題を考えさせられる。

『女を修理する男』

この邦題を見たとき、チカっと何か引っかかるものがあった。

修理、という言葉だ。

でも、この映画を見た後には「修理」という言葉を何かに言い換えようと考えてみても

自分の頭では当てはまる言葉が見つからない。

それくらい、この映画全体にいろんな思いが蠢いている。

 

1年前の今日、2019年12月4日、

アフガニスタン武装勢力に襲われ命を落とした中村哲医師のことを思い出した。

中村医師は医療活動をしているうちに、病気の根本的な問題は食料不足と栄養失調にあると考えて「100の診療所より、1本の用水路を」と、2003年からアフガン東部で用水路を作り始めた方だ。

医師が用水路を作るなんて専門外だと思われるが、問題の本質を考えて熱心に活動してこられた。

ムクウェゲ医師と重なった。

紛争地で命をかけて、その土地に必要なことをする。

 問題解決のために、やるべきことを見極めて行動する。

 他人のために動こうと決めた人間の力を二人の医師は見せてくれる。

その心はとても尊い

 

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UNHCR WILL 2 LIVE Cinema 2020

【開催期間】2020年11月01日(日)~12月10日(木)

unhcr.will2live.jp