しまんちゅの日記

~映像翻訳と映画と沖縄~

みずからでなければ死んでしまう魚

 

 『アレッポ 最後の男たち』

5年以上も内戦が続くシリアの都市アレッポ。取り残された市民35万人は包囲網に逃げ場を失い、ジェット戦闘機により昼夜を問わない爆撃を受けている。自らの命を顧みず、生き埋めとなった生存者を救おうと駆けつける「ホワイト·ヘルメット」の姿を追ったドキュメンタリー映画

 

子供の頃、よく空を見上げていた。

ヘリやオスプレイなどが空を横切るからだ。

同じように、この映画に出てくる男たちも空を見上げている。

私の場合と大きく違うのは 

空から爆弾が落ちてくることだ。

 

画面に映し出される光景は壮絶だ。

「ホワイト·ヘルメット」のメンバーたちは自ら危険な場所に赴き、

空爆で崩壊した建物に生き埋めになった人たちを瓦礫の中から引きずりだす。

バラバラになった遺体の一部も集めていく。

救助作業をしている時にいきなり攻撃される。

死と隣り合わせの日々の中で

精神がすり減っていっているのがその表情からもわかる。

建物も人間の体も破壊されて、元の形をとどめていない。

惨状を目の当たりにしたら、精神も壊され

私なら気が狂うのではないかと思う。

 

でも、どんなに過酷な状況でも人間は受け入れ、慣れていくのだろうか?

時にはサッカーをしたり、冗談を言い合ったり、ささやかな結婚式も行われる。

未来への微かな希望も心の片隅に残っている。

大きく育てて食べられるようにと魚を買い

自分たちは無理だけど、次の世代が食べられるようにと小さな木を植える。

 

「ホワイト·ヘルメット」のメンバーの1人、

ハレドは家族のことを思いトルコへ逃げ出すことも考える。

しかし故郷に対する思いは複雑だ。

 

ハレドは言う。

「俺はこの町以外では生きられない

魚が水から出たら死ぬのと同じだ」

 

 

その一方で、

崩壊寸前の建物を見ながら、奥底にある気持ちがこぼれる。

 

「廃墟を見てると

”この国を出ろ”と心の声がささやくんだ」

 

 

逃げても残っても生き地獄。

瓦礫の中、水槽に入れられた魚の映像が

とても息苦しかった。

同じ地球上で、戦争が起こっている。

教科書でしか知らない戦争の

本物の姿を見せてくれる映画だった。

 

アレッポ 最後の男たち』

<第90回アカデミー賞ノミネート作品>

長編ドキュメンタリー部門 ほか世界中の映画祭で合計23賞受賞!

UNHCR難民映画祭2018 満足度No.1映画!
シリア、瓦礫と化す街で一人でも多くの命を救うため、

決死の救助活動を行うホワイト・ヘルメット(民間防衛隊)に迫る衝撃のドキュメンタリー。

 

募金つきオンラインシアター

UNHCR WILL 2 LIVE Cinema 2020

【開催期間】2020年11月01日(日)~12月10日(木)

unhcr.will2live.jp